2018/3/3 鹿児島発“特攻セズ”出版

〇鹿児島ボランティアレポート・「特攻セズ」出版
鹿児島県曽於市大隅町に上部に大きな大理石の球体を載せた石碑があります。碑銘に「芙蓉之塔」とあり、かつてこの地にあった旧日本海軍の岩川航空基地関連の慰霊碑であることが判ります。この地に生まれ育った一人の戦後生まれの中学校女教師がこの慰霊碑に関心を抱き小冊子を出版しました。「芙蓉之塔ものがたり」、2014年10月の事です。ところが、この出版は内外に大きな反響を呼ぶことになります。それは、サブタイトルの「特攻作戦に異議を唱えた部隊」にありました。

 

<「芙蓉之塔」(鹿児島県大隅町岩川)>  <「芙蓉之塔ものがたり」>

「芙蓉部隊」は、日本海軍の第131航空隊所属の3つの飛行隊で、美濃部正少佐が指揮していました。沖縄方面で戦闘に参加、大戦末期の特攻作戦下にあって、これに異論を唱え「夜襲戦法」で多くの兵士の命を救ったと言われています。」・・・前田孝子さんはこの歴史を子どもたちに伝えようとしたのです。
ピーススフィア貝の火運動の鹿児島ボランティア、N・Kさんらはこの「芙蓉之塔ものがたり」の作者・前田孝子さんと交流を深め、2014年12月14日、鹿児島市「かごしま県民交流センター」に於いて共催で「平和講演会」を開きました。以後も、地元の戦争体験の伝承活動に取り組んでいる「岩川芙蓉会」と共に連携を深め、戦争の悲惨さ、平和の尊さを訴え各種の活動を展開しています。

<「岩川芙蓉会」の皆さん>

2018年2月12日、N・Kさんから、「芙蓉部隊」記録や中国大陸戦線に従軍された元兵士の証言、沖縄での海軍戦没者慰霊祭など前田孝子さんらが制作されたDVD5枚、それに一冊の評伝 『特攻セズ 美濃部正の生涯』がナガサキピースミュージアム事務局に届きました。

 

 『ナガサキピースミュージアムがホームページなどで岩川での活動を取り上げて頂きました。これがきっかけとなり、岩川のことや芙蓉部隊のこと、美濃部正少佐のことに興味をお持ちくださり、なんと、美濃部正少佐の生涯を本にして下さいました方がおられます。境克彦(サカイ・カツヒコ)さんと言う方が2017年8月10日に上梓なさいました。ピースミュージアムが岩川のことをご紹介下さらなかったら、この本「特攻セズ」は産まれておりません。また、時間と手間をかけて、沢山の資料集めに取材にと鹿児島・岩川まで足を運んで頂き素晴らしい本「特攻セズ」が生まれました。ピースミュージアム及び境克彦様に心より感謝申し上げます。
 「岩川芙蓉会」は毎年11月には慰霊祭、8月には戦争や平和についての催しをしています。2016年は芙蓉部隊をテーマにした演劇を東京から招き、2017年は落語家・桂竹丸さんによる創作落語「飛ばなかった特攻隊」の上演会をしました。毎年、大隅文化会館では催しの際、ロビーに「昭和19~20年の市民の生活用品や岩川芙蓉部隊の隊員が身に着けていた鉢巻などの遺品、岩川基地建設に動員された朝鮮の人々の記録などを展示しています。
 前田孝子さんは、鹿児島で戦争を体験された方を探し、貴重な体験談を記録に残すという無償の平和の歩みをずうーっとたんたんと続けておられます。私は大変素晴らしい活動だと心から尊敬しています。
 「特攻セズ 美濃部正の生涯」は、前田さんのたっての願いもありピースミュージアムへお届けしました。
 日本には「特攻隊」だけでなく、「特攻しなくても戦える方法があることを行動で示した美濃部正少佐率いる芙蓉部隊」があり、しかも二つとも鹿児島にありましたことを一人でも多くの方に知って頂きたいのです。
 「岩川芙蓉会」の皆様も高齢ですが、「伝えよう、伝えよう」とされる思いに心打たれ、私たちはささやかなお手伝いを続けています。  N・K 』

※ 「特攻セズ 美濃部正の生涯」(東京都神田神保町(株)方丈社刊・1800円+税)
*著者:境克彦・・・ジャーナリスト。1959年、大分県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、85年、
時事通信社入社。政治部、高松支局、経済部、ワシントン支局を経て、2011年
に経済部長。その後、福岡支社長などを歴任し、17年6月より編集局長。

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