2020/4/15 「偶然でなく 宿命」

〇「偶然でなく 宿命」~浜辺耕作・モノクロの祈り⑤ (2020・4/15)

長崎新聞社の被爆・戦後75年企画 『長崎原爆と創作』の第一部美術に連載されていた写真家・浜辺耕作さんの「モノクロの祈り」が5回目の今日、最終回を迎えました。ダイナミックなモノクロの作品を中心に特に長崎被爆関連やキリシタン関連の映像を撮り続けている脱公務員作家の浜辺さんの苦悩の人生を紹介しながらその体験・経験がいかに作品に投影されているか、余すところなく紹介されました。
山口恭祐記者の力作です。

2020年4月15日・第13面・文化欄です。全文掲載させて頂きます。
『諫早市の写真家、浜辺耕作(73)は、教会やマリア像、被爆遺構を被写体に、反核平和の願いをモノクロームの作品に込めてきた。しかし、そうした思いが、見る人すべてに伝わるとは限らなかった。
 2005年、米国オレゴン州ポートランドでの「長崎8・9平和展イン・ポートランド」。浜辺が200ドルで展示販売した「『空は一つ』 ONE SKY」は結局、買い手が付かなかった。平和祈念像をモチーフにした作品に関心を示す人はあまりいなかった。「アメリカでは原爆のおかげで戦争が終わった、勝利したと教えられている。平和祈念像もあまり知られていない」。原爆を落とした国で核兵器廃絶を訴える厳しさを肌で感じた。
 12年、中央の公募展「第64回三軌展」で新人賞を受賞した作品「ながさきの記憶」は、長崎原爆投下時刻の11時2分で針を止めた時計を題材にした。国立新美術館(東京都)の展示会場で、作品を見た人から「この時間には、どういう意味があるのか」と問われた。「国内でさえ、広島や長崎以外で原爆に対する関心は高くない」と肩を落とす。
 だが、自身の歩みに間違いはなかったと感慨を深める出来事もあった。
 昨年11月24日、ローマ教皇フランシスコが長崎市を訪れ、約3万人が集まった県営ビッグNスタジアムでミサに臨んだ。所属する中央の美術公募団体「三軌会」を通じてカトリック中央協議会側から依頼を受け、ミサの公式撮影に加わった。祭壇に向き合うスタンド最上段から、全景などを撮るのが役割だった。
 教皇がスタジアムに姿を現す頃、それまでの強い雨が上がった。厚い雲が途切れ、遠くに青空がのぞいた瞬間を撮影した1枚は、荘厳なイメージの作品に仕上がった。「天から神様が降りてきて、撮りなさいと言ってくれた瞬間だと思った。これが撮れただけでも幸運だった」
 カトリック信者ではない浜辺だが、教会やマリア像、原爆といった題材に向き合ってきたからこそ、この写真にたどり着いた気がする。長崎の写真家として、「偶然ではなく宿命的なものだ」と感じている。
 30年ほど前に構想した「ながさきのマリア像百態」が最後の大仕事だと心に決めている。県内に点在するマリア像だが、同じ像でも撮影のたびに違う表情を見せる。「今でも、マリア像が優しくほほ笑んでくれるかは、撮るまでわからない」。多彩な表情を100枚そろえ、一同に発表するのが夢だ。
 ただ本格的に取り組むのはもう少し先のことだと考えている。「発表しちゃったら、それで終わりのような気がするから」  =文中敬称略= (山口恭祐)』  =モノクロの祈り・おわり=

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