2024/6/25 井川惺亮展 ~長崎新聞に掲載~

『井川惺亮 Peinture ~折り鶴幾何学と共に~』展6月30日(日)14時まで開催。

6月21日(金)付、長崎新聞に掲載されました。全文をご紹介します。

『長崎大名誉教授で現代美術家の井川惺亮さん(79)=西彼長与町=の個展「Peinture 折り鶴幾何学と共に」が、長崎市松が枝町のナガサキピースミュージアムで開かれている。井川さんは、東京芸術大時代の恩師で昨年6月に102歳で亡くなった洋画家、野見山暁治さんへの思いも胸に、今年も平和の表現を模索し続けている。
個展会場には80号、100号のアクリル画など「流し絵」シリーズが並ぶ。たっぷり溶いた絵の具をキャンバスに落とし、持ち上げたり左右に傾けたりしてできる絵の具の“軌跡”。赤、黄、青を基本にした鮮やかな色が何層にも重なり合い、まるで伸び伸びと踊っているように見える。
この流し絵に、長年モチーフにしている「折り鶴」の要素を加え、折り鶴の展開図から着想を得た直線を「折り鶴幾何学」として描き足した。アートと平和を自問しながら近年たどり着いた表現だが、今回はあえて折り鶴幾何学を入れなかった作品もある。「見る人に絵画の楽しさを感じてもらえたら、平和につながる。折り鶴の力を借りなくても、絵で平和を表現できれば」
 ■存在
 井川さんは東京芸大で、洋画家の故山口薫さん(1907~68年)、野見山さんから油絵を学んだ。野見山さんについて「気楽にやりなさい、絵画は自由だからと優しかった」と井川さん。大学院修了後、渡仏する際も背中を押してくれたという。1984年に長崎に赴任してからも、はがきのやり取りを続けてきた。
 具象と抽象の枠を超えた独自の画風で多くの人を魅了し、文化勲章も受賞した野見山さん。戦没画学生の遺作を展示する「無言館」(長野県上田市)の開設に尽力した。平和を追求する恩師の存在は、古里を離れ、被爆地長崎で絵画と向き合う井川さんに刺激を与え続けた。
 22年、県美術館(長崎市)で野見山さんの個展が開かれた際、師弟関係を知った美術館側から声がかかり、井川さんの作品が隣の展示室に並んだ。一緒に作品を鑑賞した時間を「学生時代のように緊張した。うれしかった」と懐かしむ。野見山さんの作品について「平和のモチーフを取り込んでいるのではなく、平和への思いがあるから、絵にそれが反映されている」と、改めて実感した井川さん。その翌年の訃報に、言葉を失った。
 ■探求
 折り鶴幾何学を作品に取り入れたり、消したり。確立した表現を解体、再構築しながら、絵画と平和の可能性を探り続ける井川さん。平和を愛した恩師のまなざしを思い浮かべ「野見山先生のようにもう少し平和の解釈を広げ、描く喜びを掘り下げていきたい」と探求心は尽きない。
 井川さんの個展は30日まで。29日午後2時から同ミュージアムで、県美術館の学芸員、稲葉友汰さんとの対談もある。                    (清水嘉子)』

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