2019/5/12 長崎くんち初の“女性博士”誕生!

○長崎くんち初の“女性博士”誕生!
~長崎純心大学:博士論文公開発表会(2019・5/11)~

この女性は、長崎純心大学大学院で学んだ長崎市の大田由紀さんです。大田さんはNBC長崎放送でディレクターとして番組制作などに従事し、定年退職後一念発起し大学院に入り、子どもの頃から親しんだ長崎くんちの研究に没頭しました。5年ほどかけた論文『長崎くんちから見る地域住民の社会的関係について~戦後の踊町運営を中心に』が修士(学術・文学)の学位を授与され、これをベースにグレードアップした今回の論文『長崎くんちにおける風流(ふりゅう)と踊町の役割』に対し博士(学術・文学)の学位が授与<2019年3月19日>されました。長崎くんち研究で初の“女性博士”誕生です。


<長崎純心大学>                  <博士論文公開発表会(5/11)>

<大田由紀さん>

大田由紀さんの博士論文『長崎くんちにおける風流と踊町の役割』公開発表会が、2019年5月11日長崎市三ツ山町の長崎純心大学で行われ、学生・教職員だけでなく市民らも多数聴講。
大田さんは予定の50分を超える講演で研究にかけた情熱と熱意ぶりを見せ参加者の拍手をあびていました。

長崎くんちは長崎・諏訪神社の秋の祭礼ですが、長崎に栄えたキリスト教の禁令との関連で幕府が格別に力を入れて盛んにした経過があり、しかも長崎の国際交流の歴史も入り交じり、町を挙げての大祭として発展しました。
大田さんはこの“極めて政治性の高かったくんち”を“長崎町人自らの楽しみに変化させていった”点に着目されました。大田さんは今回そのタイトルに“風流と踊町の役割”をつけられていますが、“風流”とは「斬新なアイデアにより毎回目先を変える趣向で見物人を驚かすこと」(国立歴史民俗博物館研究映像2001)とし、長崎くんちはこの“風流という美意識が色濃く反映された祭礼である”といわれると紹介されています。そして、各踊町が“工夫を凝らし趣向を競い合った、風流という美意識をもっとも象徴している”のが「傘鉾」だと指摘するとともに、その「傘鉾」を町印として発展した“奉納踊の変遷と、それを維持し続けた踊町の運営の実態”を今までにない豊富な資料で考察し、論文にまとめ上げられました。
特に今回は、天保年間のくんちの様子を伝える神戸市立博物館所蔵の「井上竹逸旅日記」、長崎を代表する著名な素封家・高見家<榎津町の「傘鉾一手持ち」>の明治時代の神事記録簿、紺屋町の傘鉾町人・山田家の大正時代から昭和時代初めの神事記録簿、東濱町の神事明細表など古資料69点、オランダ・ライデン国立民族学博物館で発見された“くんち写真”など新たに認識された豊富な資料が活用されており、
論文の審査に当たった純心大学の宮坂正英教授は「研究家が簡単にアプローチできない資料を豊富に使用している」、また、非常勤講師で長崎史談会会長の原田博二さんも「郷土史の範囲から全国の祭りとの関連を考察するなど斬新だ」とその研究を高く評価されています。

 
<原田会長・大田さんご夫妻・宮坂教授>  <博士論文を手に大田さん>

大田さんの博士論文『長崎くんちにおける風流(ふりゅう)と踊町の関係』は、当面、同大学図書館で閲覧できますが、宮坂教授は「将来、出版も考慮したい」と話しておられました。
いずれにしても、長崎くんちの学術的研究は例がなく、幼い時からの経験と知識を踏まえて研究し“博士号”まで達成されたその努力、そして快挙は、長崎学の発展に大きく寄与したことは間違いありません。
改めて、“大田由紀”博士に賛辞をお送りします。

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